ウゴイに会いたい‼︎ 届け俺の思い‼︎ 新島編③
3日目最終日の朝。3時に目覚ましをかけていたが、無意識に止めてたようで4時に起床。やっちまったなぁと思い急いで支度をしてシークレットに向けて出発。
シークレットの駐車場に着くと、そこには既に何台か車があって、新島マリンのマスターとヒデ林さんの一行がいることがわかった。
寝坊したことを猛烈に後悔し、急いでウェーダーや竿などの装備を準備して暗い中軍行を開始する。
満潮が7時前ということもあり、潮位が高い。崖が隣接するところは満潮いっぱいで渡ると危険と思い早く起きるつもりであったが、今となっては仕方がない。腹をくくって薄暗いサーフを一人のしのしヘッドライトをつけて歩く。風は南からの横風が強く、歩く向きの正面から吹き付け、歩くだけでしんどい。その上、焦りから自然と早歩きになり、発汗が促され、既にウェーダーの内部がビチョビチョに。そして歩みを止めれば冷えて寒くなるという悪循環。
疲労もかなり溜まっており、釣れるとも限らないのに一人サーフを重装備で1時間も歩くのは正直しんどかった。
けど、自分で考えてエントリーを決めたポイントだったので途中で歩くのをやめて適当な所で釣りをするのは嫌だったし、次いつ新島に来ることができるかわからないので、立ち止まったら絶対に後悔すると言い聞かせて歩き続けた。
今までの遠征はガイドがいたり、ボートから釣りをしたり、釣り堀であったりとある意味楽なものであった。でも今回は、自分の足とアタマを使って初めての場所で釣りをしている。自力で何かをする事の大変さが身にしみて分かった。
40分ほど歩き、ヘッドライトが不要なほどあたりが紫色の朝ぼらけに包まれた頃に、新島マリンのマスターと出会った。
状況を聞くとアタリも無く、横風が強く釣りがしづらいようだ。まあよい、それも覚悟の上よ。マスターから先端まで行け!と激励され、行ってきますとさらに先を目指す。
聖地の先端が見えてきた時、予想はしていたが、先端にはヒデ林がエントリーされていた。
さすがはプロアングラー、その体力と気力はどこから来るんだ、もう素直に尊敬するしかなかった。
自分はマスターとヒデ林さんのちょうど間くらいにエントリーする事にした。間といっても各々1キロ程度離れている。
改めてフィールドを観察すると、ちょうど自分が立っているところは南端にかけてゆるいワンド状になっており、手前側のワンドの入り口にマスターはエントリーしていて、ヒデ林さんはワンドの終点、つまり最南端にエントリーされていた。
なるほど、確かに立ち位置としてはマスターとヒデ林さんの位置が絶対に正解であるのは自分でも分かった。
でもきちゃったものは仕方ない、自分に与えられた手札で勝負するしかないんだ。
さらに観察を続けると、波打ち際には小さなベイトが確認できた。これはプラスの要素。テンションが上がる。さらに時間が経つにつれてカモメがワンドの入り口、マスター側へと集結してきた。これは願っても無いチャンス。昨日はベイトは確認できなかったので、状況が好転しているのは確かなようだ。
しかしいかんせん横風が強い。そして波足も長く、度々セットの大波が来るたびに足元がものすごいパワーで持っていかれる。恐れすら感じる。
安全マージンを取って波打ち際から少し離れその分飛距離の出るルアーで流れがどうなのかを探っていく。使用したルアーはログサーフ144fやタイドミノーフライヤー140、シャアラインシャイナー14SL-F、レスポンダー149f。一昨日昨日とサーフをわからないなりに歩き回った事で、サーフにも河川と同じく流れの強弱が存在することや、波の立ち方、泡の流れ方によって変化が結構あることを学んだ。
目で見て、肌でルアーから伝わる抵抗を感じて変化のある所を探りながら歩いていく。
パズルを解くことや推理小説なんかを読むこととと感覚が似ている気がして、これだけでワクワクした。
横風が吹く中、弱まったタイミングでフルキャスト。ルアーの引き抵抗や、帰って来る位置から流れを想像する。たまに見える沈み根も打ってみる。けれども反応はない。
ああ、リベンジ案件確定だなと少々弱気になった頃、波打ち際の泡が一際沖に向かって流れ始めた。ルアーを通してみる。明らかにリトリーブが重い。
あ、ここがこの付近では一番いい離岸流かな
と思い、一番飛距離の出るレスポンダーにルアーをチェンジ。
波、風共に収まるタイミングを待って沖に向かって伸びる泡の筋の先にフルキャスト。
狙いどうりにルアーが落ち、リトリーブを始めた瞬間、ゴツンとした衝撃が手元に伝わった次の瞬間スワットが胴からぶち曲がった。
咄嗟の出来ごとに心臓が止まりそうになったものの、無意識に竿を立てていた。
もう無我夢中で巻く。巻くのに比例して竿がどんどん曲がっていく。
あわあわしながら巻きながら自分も後退する。
多分時間にしては30秒くらいだったと思うけど、自分にとってはとても長い時間だった。
波打ち際まで寄せて、最後は寄せ並みに乗せてずり上げた。
そこにはスズキがいた。でもいつも釣っているマルスズキとは全然違うスズキ。
銀鱗の体にバラマンディを思わせる体高、1つ1つが力強いヒレとぶっとい尾ビレ。そのたくましい体に似合わないがどこかしっくりくるかわいい大きな目。
身体中が震えているのが自覚できたが、放心状態で目の前のヒラスズキを見つめていた。
しばらくするとついに憧れの存在を釣り上げたという実感が湧いてきて、自然と叫んでしまった。思いがけず目から涙も流れてきて、頭から波をかぶってずぶ濡れになったこととか歩きくたびれたこととかもう全部どうでもよくなった。
自分の力で釣った魚。自分の魚と胸を張って言える魚と出会えたことが幸せだった。
サイズを測る。75センチ。自分のスズキの記録の中では2番目のサイズ。だけどサイズは関係なかった。ヒラスズキに会えたことで幸せだった。
写真を撮ろうと、ウエアのジッパーを開けてケータイを撮ろうとすると、いつも閉めているジッパーが開いていた。嫌な予感。案の定ケータイは無かった。
けど、その時はケータイがなくなったことすらどうでもよかった。
写真に撮れないなら心のシャッターに刻もうと一緒に海に入ってずっと眺めていた。とてもカッコよかった。惚れてしまった。やはり自分の恋は間違っていなかったんだなぁと少々キモい余韻にふけていた。
波打ち際に置いていたタックルが大波で浸水&砂まみれ。ルビアス入院決定。
でもそれすらどうでもよくて、隅々まで眺めた後、大切にリリースすることにした。心のシャッターも満足したし。
波間に帰る魚体を見送った後、ポカリを飲んで余韻に浸った。すげー幸せだった。いつまでもこうしていたかった。
しばらくした事の重大さに気がついた。ケータイは年末に買い換えたばかり。ルビアスの入院費用もバカにならないんじゃね?と不安になる。
全力で来た道を戻ってケータイを探す。
ウミガメの死骸とか、なんかの背骨とかは見つけたけどケータイは無い。
現実に戻った途端披露がどっとのしかかった。
帰ろう。
お父さんお母さんに大目玉を食らうのは避けられないことを覚悟して帰路につく。
この帰路の1時間が本当にしんどいような嬉しいような複雑な気分だった。
駐車場でも、片付けの最後に竿をしまい忘れ発車したらスワットのグリップのケツの所を轢いてしまった。幸い折れなかったけどちょっとグリップエンドが潰れた😱
気が抜けすぎでもう満身創痍だった。もう事故らないようにだけ気をつけて宿に帰った。
宿に着いた後は、たまたま持っていったiPadでどうにか連絡を取って、買っておいたカップヌードルを食べて、道具を洗って干した後、間々下海岸にある、屋外の無料の温泉に行くことにした。
この温泉は無料で入れるが水着の着用が義務づけられている。
こんな感じで足湯もある。
最高のロケーションで汗を流した。
その足で新島マリンに立ち寄ってマスターに釣果を報告した。マスターは感激するほど祝ってくれた。がっちり握手した事は絶対に忘れない。昨日まで赤の他人だった人がここまで仲良くなる趣味もなかなか無いと思う。最高の趣味だ。
その後、ウェーダーとライジャケを郵便局から富山のアパートの部屋に送って、荷造りをして14時半頃の高速船で東京に帰りました。
帰りの船は、疲労からか船酔いをしてしんどかった😱
けれども、終わってみたらとても充実した遠征だった。
そして恋していたヒラスズキへの思いは一層強くなってしまったのであった笑
また必ず新島に訪れることを誓って。
おわり。